第39号:「家族もできる、片麻痺へのリハビリ」その20

 

 

 

 

<第39号(2020.1.12)>

 

 

 






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家族がリハビリをする時代 ~ご自分やご家族でカンタンにできて、効果の出るリハビリ~

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こんにちは、発行人の理学療法士 レナトです。

理学療法士はリハビリの国家資格です。

このメルマガの発行は「ほぼ週刊」なので、ゆっくりしたペースでやらせてもらっています。

拙い文章でお見苦しいところがあるかも知れませんが、よろしくお願い致します。






第39号は、こちらです↓


■「家族もできる、片麻痺のリハビリ」

  その20:肩甲骨を操作して、ラクに立ってもらう方法



■編集後記:暖房を使わないと動きにくくなり、支出増になりかねません


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■肩甲骨を操作して、ラクに立ってもらう方法
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さて、

このメルマガの第20号からは、脳卒中(脳出血や脳梗塞など)の後遺症である「片麻痺」へのリハビリに関するシリーズが始まっています。

最近のメルマガでは、体の支え(特に体幹)ができると、

ご本人の「生活の質」も具体的に高まりますよ、というお話をさせて頂いたり、

「相手の頭の位置が高くなると、立ち上がり動作もラクになる(介助量も減る)」というお話をお伝えしました。






レナト式リハビリは、カンタンな方法で体の支えをつくって行きますが、

「その支えができるまでの期間は、どうすればいいのか」というお話を、今回はさせて頂きます。

具体的には「介助する」ことになるので、その介助方法の話になるのですが、

単に介助するのではく、そこに「リハビリ(治療)の要素」を含めた方が効果的なので、

「立ち上がり動作」を例に、その方法をお伝えします。

次号でお伝えする動画とセットで観てもらう方が良いので、今回は前編という感じですね↓






「肩甲骨を操作して、ラクに立ってもらう方法」(4分32秒)
https://www.youtube.com/watch?v=LJ1BZsRvjPM&list=PL87Hh0oDQOdcvOYWW0DkyEWhprXi-jWff&index=5






動画の中では、

1.「立ち上がり動作では、重力(ご本人の上半身の重さ)を利用してラクにお尻を浮かせるには、頭が高い位置にある必要がある」

2.「同じ原理で、介助の際も(肩甲骨の操作によって)頭を高い位置にセットしてから介助した方が、お互いにラク(動作も介助も)」

3.「単に介助するだけでなく、『治療(リハビリ)の要素』を入れた介助方法であれば、更に効果的」

4.「体が本来もっている『運動連鎖』という効率的なシステムを、介助でも利用すれば理にかなっている」

などについてお伝えしています。







人間の体は長い年月をかけて進化してきているため、

「理にかなった効率的な動作」ができるように設計されていますね

逆に言えば、動作能力が低下している高齢者などは、

その「理にかなったシステム」をうまく使えない状態になっているとも言えます。






「理にかなったシステム」の主な例には「運動連鎖」があります。

動画の中では、「アゴを引くと、自動的に背骨が曲がる(動きが連動する)」という例や、

「上半身を起こすと左右の肩甲骨が内側かつ下方へ移動する(〃)」という例をご紹介していますが、

いずれも、「こうすると、自動的にこう連動する」という、人体にもともと備わっている便利な仕組みです。






であれば、この便利な仕組みを「介助」に取り入れない手はないですね。

例えば、立ち上がり動作の際に一時的に頭の位置を高くしたい(体幹を起こしたい)場合、

決して相手の頭をつかんで高い位置に把持するわけにもいかないですし、

「しっかり頭を高くして!がんばって!」と精神論で攻めても、物理的な支えが出来ていない時期では、無理です。






この時に、肩甲骨の動きと背骨の動きが「自動的に連動」することを利用します。

介助者が肩甲骨を操作してあげれば、相手の背骨(上半身)を「無理なく」起こしてあげられます。

その際、肩甲骨周囲の筋肉・筋膜が硬いと、肩甲骨の動きを妨げるので、ほぐしてから行って下さい。

肩甲骨の動きと背骨の連動は、ご自分の肩甲骨を動かして試せばすぐ分かりますし、他者の肩甲骨の操作もカンタンです。






この介助(肩甲骨の操作)により、相手の頭の位置は一時的に高くなるので、

その状態から上半身を前下方へ落とし込むよう誘導(介助)してあげれば、

お尻がカンタンに浮くことにつながりますが、

この際、お腹の力が抜けていると胴体がグラグラした感触があり、立ち上がり動作が不安定になるので、

次号では後編として、体の中心であるお腹の安定(腹筋の収縮)もそのまま誘導しつつ、立ち上がり完了までご紹介する予定です。






介助はもちろん「安全第一」なのですが、

相手がやれる動作まで介助でやってしまうと、相手のその動作能力は退化するため、

ご本人は自分で動ける割合が減り、介助者は介助量が増えるので、長い目で見ればお互いに良くありません。

であれば、介助の中に「リハビリ(動作能力の向上)の要素」を入れてあげれば、

毎回、介助をするごとにリハビリを施していることにもなるので、能力向上・介助量軽減へ最短距離で進んで行けますね。






レナト式リハビリでは一貫して、「最小努力で最大効果」を狙っています。

そのために、人間の体が本来もっている「運動連鎖」を、リハビリでも介助でも活用するわけです。

私としては、リハビリ専門職でない方にも、その便利なシステムを利用してもらえるよう、

分かりやすくお伝えして、「共有」することが大事だと考えています。







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■編集後記
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今回は「運動連鎖」の話が登場しましたが、

逆に、それがなかったら、どうなってしまうでしょうか?

一つ一つの動きが「ぶつ切り」になってしまい、

カクカクした動き、マネすると疲れそうな動きになりそうです。





以前の私は、それを「ロボットみたいな動き」と、説明の都合上、表現していたのですが、

最近の技術が進んだロボットを見ていると、動きが非常になめらかになって来ているので(笑)、

その表現が使いにくくなって来ました(苦笑)。時代は変わるものですね。





いずれにせよ、

長期臥床や、家の中で動かない生活を続ける高齢者など、

「運動連鎖」を起こしにくい体になっている人は、効率的な動作が物理的に行いにくくなっているので、

リハビリの方向性としては、それを取り戻す方へ向かっていかないと、ラクに動けるようになるはずがありませんね。





今は真冬ですが、在宅の高齢者などは

経済的な理由や昔からの習慣のせいで暖房をつけない人が少なくないため、

全身がカチカチに硬くなってしまいがちです。

そうすると、今回ご紹介した「肩甲骨の操作」自体が、その硬さのせいで行いにくいため、

ほぐす手間がかかったり、と介助者の負担が増してしまいます。





動けなくなることでかかる医療・介護費や、

介護・介助するご家族がその時間働けず、得られなくなる収入額、

ご家族が疲れたり、体を痛めてしまってかかる体のメンテナンス費用、などなど、

それらの支出をトータルで考えると、暖房を使った方が安く済むかも知れませんね。








最後までお読み下さり、ありがとうございました。

発行頻度は「ほぼ週刊」としていますが、

早まったり、遅くなったりするかも知れませんので、ご了承下さい


では、また次回をお楽しみに!

(レナト)



・今後もリハビリ関連の内容を、YouTubeの動画も使って、簡単にお伝えして行きます

(YouTubeのチャンネル名は「人生リハビリちゃんねる」です)。


・バックナンバー(ページの後半にございます):https://no-pain-yes-gain.com/free/w46