第32号:「家族もできる、片麻痺へのリハビリ」その13

 

 

 

 

<第32号(2019.11.24)>

 

 

 





☆★☆──────────────────────────────────────

家族がリハビリをする時代 ~ご自分やご家族でカンタンにできて、効果の出るリハビリ~

───────────────────────────────────────── 

こんにちは、発行人の理学療法士 レナトです。

理学療法士はリハビリの国家資格です。

このメルマガの発行は「ほぼ週刊」なので、ゆっくりしたペースでやらせてもらっています。

拙い文章でお見苦しいところがあるかも知れませんが、よろしくお願い致します。







さて、第32号は、こちらです↓


■「家族もできる、片麻痺のリハビリ」

  その13:片麻痺:曲がる足首を無理に戻そうとしても「拘縮」を招きます



■編集後記:ご家族の「共倒れ」を防ぎましょう


_______________________

■片麻痺:曲がる足首を無理に戻そうとしても「拘縮」を招きます
_______________________


さて、

このメルマガの第20号からは、脳卒中(脳出血や脳梗塞など)の後遺症である「片麻痺」へのリハビリに関するシリーズが始まっています。




第22号からは、「どの筋肉を優先的につくるのか」というお話を進めていて、

「お尻まわりの筋肉からつくる」という理由や動画のご紹介が始まりました。

(厳密には、身体の中心である『腹筋の締り』から整えるのですが、説明の都合上、『お尻まわりから』としています)

これは片麻痺に限らず、人間の体に共通して優先的につくる必要がある部位ですので、先にお伝えしてきました。





第27号からは、実際に「麻痺」という言葉が登場する動画も織り交ぜ始め、

その流れで、第28号からは「麻痺がある筋肉を強くする」という話に入り、

前回は姿勢を左右均等に近づけてあげると、リラックスした状態になれて、

「感覚情報」が体に入りやすくなるため、筋緊張が更に適正化される「好循環」になる、

という話をさせてもらいました。





今回は、そういう筋緊張の適正化を妨げる(悪化させる)ことを

周囲の人が「よかれと思って」やってしまう一例です。

非常によく見かけるケースを、例としてお伝えします↓





「片麻痺:曲がる足首を無理に戻そうとしても「拘縮」を招きます」(4分50秒)
https://www.youtube.com/watch?v=atL-wze-oaY&list=PL87Hh0oDQOdclnaYJOjpn-gSEZiZqfh5P&index=4





動画の中では、

1.「過緊張タイプの片麻痺では、麻痺側の足首が内側に曲がってきてしまう場合がある」

2.「それを戻したいご家族など周囲の人が『よかれと思って』硬めのクッションを両足の間に入れるが、悪化させてしまう」

3.「脳の制御が低下すると、強い筋肉の影響が前面に出てしまい、関節が曲げられてしまう」

などについてお伝えしています。







麻痺側の肘が曲がっている人を道端でも見かけますが、

関節がその状態にならざるを得ない事情や仕組みを、動画の中でカンタンに説明しています。

理由があって関節が曲がるので、その解除なしに無理にそれを戻そうとしても『逆効果』になりやすいため、注意が必要です。






では、足首が内側に曲がると、何がいけないのでしょうか?

例えば、寝たきりにはさせたくないので、車イスで時々は移動したいですが、

車イスに移乗する際に「立ち上がり」動作が必要になります。

しかし、足首が曲がっていると、足の裏を床にベタっとつけないため、

体重を載せる「土台」としては、不適な状態になります。

ベタっと床につけていない足に無理に体重を載せて立ち上がっても、不安定で危険ですね。






左右均等な姿勢なら「骨で支える」割合が高いため、周辺の筋肉たちは比較的リラックスできるのですが、

姿勢がゆがんでいると、骨で効率よく支えられず、その分「筋肉が無理して支える」ため、

筋肉の過緊張がエスカレートし、ゆがみや、そこから来る不安定さが増す「悪循環」にハマりやすくなります。






問題なのは、そういう仕組みで過緊張が増している状態なのに、無理に(力づくで)ゆがみを直そう、曲がった関節を伸ばそうとすると、

痛みが出やすく、痛みに対する「防御収縮」で筋肉は更に過緊張になる、

更なる「悪循環」にハマって行ってしまうことです。

こうなるともう、「よかれと思って」ゆがみを戻そうとしたご家族も、ご本人も困り果ててしまいます。

痛いことをされた上に悪化するので、ご本人が「拒否」に走ってしまいかねず、色々と「悲劇」です。






余計な緊張を取り除くには(一般の人々の状態に使づけるには)、


・姿勢をできるだけ、左右均等にすること

・感覚情報(触覚ほか)が、体に入りやすい状態にすること


が必要なのですが、それら2つは「リラックス」という共通した要素で結ばれます。







つまり、姿勢が左右均等になれば、骨で支える割合が高まるため、筋肉は「リラックス」しやすくなりますし、

リラックスしていると「感覚情報」が入りやすくなり、緊張不要な場面だと体が認識できることで、更に「リラックス」できます。






感覚情報の話をもう少しすると、例えば、片麻痺の人でなくても、何かに集中していると、

他者から話しかけられても気づかなかったりしますね(聴覚情報が入りにくくなっていますね)。

心と体はつながっていますし、精神や体(筋肉)の緊張が高いと、感覚情報が入りにくくなります。






周囲からの情報が感覚のセンサーを通して入りにくいと、体としても「適度な緊張レベル」が分からなくなるため、

「(不安や不安定さから)防御的に過緊張になり、身を守る」状態になりやすいです。

例えば、初めて車を路上で運転したら、緊張のため視野が狭くなり、視覚情報があまり入ってこないため、

余計に怖くて、余計に緊張しやすくなり、余計に視野が狭くなる「悪循環」になるのも、同じですね。






それを改善するために、これまでのメルマガで、姿勢を左右均等に近づけました。

そのように物理的にリラックスしやすい状態にした上で、

更に感覚のセンサーから感覚情報を入れやすくする例として、

手のひらや脚の裏をほぐし、軽く刺激を入れることで、

「緊張しなくても大丈夫だよ」と体に伝えることを、今回の動画の中でご紹介しています。






自分がどういう状況にあるかが感覚のセンサーから伝われば、必要以上の緊張がそぎ落とされていくので、

片麻痺で握ったままの指を伸ばしたり、床につかなくなっている足の裏をベタっとつけて体重を載せたりという、

本来の「好循環」な状態へ導いて行く作業がしやすくなります。

足が体重を載せやすい状態になれば、体重をかけるリハビリへ進めますしね。






ただでさえ「麻痺」のために苦しみもがく方を、「よかれと思って」悪化させる方向へ追いやるのは、

ご本人もご家族も、医療関係者も、誰もハッピーにならないため、本当に避けたいですね。




_________________
■編集後記
_________________

「よかれと思って」が良くない話は前回もしましたが、

これはまだ、相手のことを思いやっている要素があるので、まだいい方かも知れません。




ところが、臨床で多く見かけるのが、介護するご家族が自分自身への負担増に「恐怖」して、

リハビリの進行を待てずに、ご本人に無理をさせ、悪化させてしまう場合です。

しかも、「歩けなくなると困るから、本人をたくさん歩かせてやって下さい」という具合に、

リハビリに対しても、「段取り」も何も無視したリクエストを、強く訴えて来る場合があります。





何事も合理的な「段取り」を経ないと最短で進まないため、治療も最短コースを取れません。

先を急ぐばかりでは、悪化させて、かえって回復が遅れ、ご家族は自分で負担を増やしてしまいます。

このような、ご家族の「共倒れ」を自ら招いてしまうケースを防がないと、大変なことになりかねません。

次回の動画では、そういうテーマで作ったものをご紹介する予定です。







最後までお読み下さり、ありがとうございました。

発行頻度は「ほぼ週刊」としていますが、

早まったり、遅くなったりするかも知れませんので、ご了承下さい


では、また次回をお楽しみに!

(レナト)



・今後もリハビリ関連の内容を、YouTubeの動画も使って、簡単にお伝えして行きます

(YouTubeのチャンネル名は「人生リハビリちゃんねる」です)。


・バックナンバー(ページの後半にございます):https://no-pain-yes-gain.com/free/w46