第56号:介助方法「起き上がり編:その1 上半身を起こす場面も『連結』を

 

 

 

 

<第56号(2020.5.9)>

 

 

 








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家族がリハビリをする時代 ~ご自分やご家族でカンタンにできて、効果の出るリハビリ~

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こんにちは、発行人の理学療法士 レナトです。

理学療法士はリハビリの国家資格です。

このメルマガの発行は「ほぼ週刊」なので、ゆっくりしたペースでやらせてもらっています。

拙い文章でお見苦しいところがあるかも知れませんが、よろしくお願い致します。






このメルマガは、自分が作ってきたYouTube動画が増えてきたため、

「こういう順番で動画を観てもらった方が、分かりやすいですよ」というガイドとして始めました。

動画の内容の補足も、メルマガの文章中に書かせてもらっています






現在はコロナウイルス騒動の渦中にあり、高齢者がデイサービスなどに行けないケースも出ているため、

「介助方法シリーズ」を始めました(以前、別なシリーズで登場済の介助関連動画も、必要に応じて再登場させる予定です)。

コロナ騒動前のような運動やリハビリが出来ていないと、高齢者の身体能力(動作能力)は低下しやすく、

低下した分は誰かが(特にご家族が)補う必要があるため、「介助量」が増えやすいですからね。







第56号は、こちらです↓


■介助方法「起き上がり編:その1」

  【起き上がり介助】「介助による悪化」を防ぎ、「リハビリ」の要素も入れる介助方法



■編集後記:介助は相手の反応をみながら



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■【起き上がり介助】「介助による悪化」を防ぎ、「リハビリ」の要素も入れる介助方法
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「介助者自身を(腰痛から)守る話」→「電動ベッドの操作の話」と来て、

「相手の体の『連結』を強める必要性」ついてお伝えして来ました

今回からは、実際の動作をどう介助するかの具体的な方法の話に進みます。







私はリハビリ専門職なので、単なる介助方法ではなく、

「リハビリ効果もある介助方法」のお話をさせて頂きます(カンタンですよ)

まずは、要介護度が高い(ご本人があまり動けない)設定として、

「(ベッドからの)起き上がり動作」の介助です↓









「【起き上がり介助】「介助による悪化」を防ぎ、「リハビリ」の要素も入れる介助方法」(3分55秒)

https://www.youtube.com/watch?v=ww7TanyuGMM&list=PL87Hh0oDQOdcvOYWW0DkyEWhprXi-jWff&index=3






動画の中では、

1.「起き上がり動作でも、頭・胴体・骨盤などの体の各パーツを『連結』させないと、グラグラして介助しにくい」

2.「介助される人も、『連結なし』で体を動かされると怖いし、そのせいで力んでしまう」

3.「もともと不動時間が長く全身が硬い人を力ませると更に硬くなるし、痛みにもつながりやすい」

4.「介助で『連結』を補ってあげることは、それ自体に『リハビリの効果』がある」

などについてお伝えしています。








今回の動画は、「起き上がり動作」の中でも前半である、「上半身を起こす」部分です。

動作の後半である「体を回転させて、腰掛けてもらう」部分は、次回に予定しています。

「連結させる」というのは「連結を強める」と捉えてもらうといいです。

例えば、仰向け状態から、頭と胴体との連結が強まっていないのに介助で起こされると、

頭がカクっと下方に垂れた状態になり、首を痛めそうですね。








安楽に寝転がっている場合を除いて、どんな姿勢や動作も、ざっくり言えば、

緊張している部分(仕事している筋肉)とリラックスしている部分(仕事していない筋肉)の組み合わせで成り立ちます。


表現を変えれば、仕事すべき筋肉が仕事してくれているから、その他の筋肉は休めるわけですね。

起き上がり動作で言えば、腹筋などが仕事してくれているから、背筋などはリラックスできます。







ところが、自分が介助されてみると分かりますが、

どの筋肉も仕事していない状態(全身脱力状態)で他者から起き上がり介助をされると、

体の各パーツはグラグラで不安定に感じるため、全身で力んで「防御」しようと体は反応します。

起こされる際に自分の頭が急に垂れ下がって、首などを痛めたくないからです。







であれば、本来自分で起き上がる際に仕事していた(腹筋などの)筋肉が締まるように

介助者が介助してあげられれば、相手の体を必要以上の緊張状態にはしないし、痛みも引き起こしにくいし、恐怖心も与えにくです。

その結果、「拒否」につながりにくいし、『連結』をつくってあげること自体が動作改善のリハビリにもつながるため、

「好循環」に入りやすくなります。逆だと「悪循環」で、ご家族は「共倒れ」になりかねません。







介助する人は試しに、ご自分が仰向けに寝転がった状態で、ご自分の手をお腹(腹筋)と首の前面に置いてみて下さい。

その状態から、自力で起き上がろうとしてみると、腹筋や首前面の筋肉はどうなりますか?

頭を持ち上げようとする直前に(ほぼ同時に)、腹筋→首前面の筋肉と順番に収縮する(その結果、頭・胴体・骨盤の『連結』が強まる)のが感じられるでしょう。

これらの筋肉が仕事をするから、その他の部位はリラックスできます。

介助でも、『連結』をつくりながら(強めながら)行うことで、それを再現・強化(維持)でき得ます。







家庭内に協力してくれるご家族がいるなら、(または介護仲間同士などで)、

自分が介助される側になって、どう介助されると『連結』がつくられる(強まる)か、色々と試してみて下さい。

『連結』を意識した方が、意識しないよりは明らかに、

関係者全員にとって、良い方向へ向かえますよ(慣れれば、アッサリできるようになりますし )。






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■編集後記
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「動作を介助する」場合、相手の反応を無視してはいけません。

私が新人時代に勤務していた病院での、ある光景を思い出します。

重度の脳卒中後遺症・長期臥床の患者さんがいて、全身が硬く、

体を動かされると「痛み」を訴える人でした。







ある時、病室に看護師が数名入って来て、定時の体位変換を行おうとしているのですが、

ご本人は、体に触られる前から、文字通り「息を飲んで」目を見開き、全身を更に硬直させていました。

「防御態勢」に入ったわけですね。かなりつらい衝撃に襲われることが分かっているからでしょう。

そして実際、看護師数名による体位変換の最中も、「痛いよ!痛いよ!」と訴えていました。







とても忙しい看護師たちが、効率重視で相手の体を「せーの、ゴロン!」と扱うことを、

悪いとは言い切れませんが、それを繰り返して相手の全身を更に硬くさせ、

更に体位変換しづらい体にし、看護師の人数を更に増やして対応せざるを得なくなるようであれば、

誰の利益にもなりません。その状態で退院させられても、ご家族は途方に暮れてしまうでしょう。

当時新人だった私には、まだその「悪循環」を断ち切ってあげるスキルもなく、やるせない気持ちになったものです。






介護も介助も、相手の反応をみながら、

うまくいってないなら「何かが、おかしい」→「誰か、より良い方法を知らないか」という方向へ

向かって欲しいと願います。

微力ではありますが、私の方で出せる情報は、引き続き、出させて頂きます。










最後までお読み下さり、ありがとうございました。

発行頻度は「ほぼ週刊」としていますが、

早まったり、遅くなったりするかも知れませんので、ご了承下さい


では、また次回をお楽しみに!

(レナト)



・今後もリハビリ関連の内容を、YouTubeの動画も使って、簡単にお伝えして行きます

(YouTubeのチャンネル名は「人生リハビリちゃんねる」です)。


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