第45号:福祉用具「車椅子編:その4」

 

 

 

 

<第45号(2020.2.23)>

 

 

 







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家族がリハビリをする時代 ~ご自分やご家族でカンタンにできて、効果の出るリハビリ~

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こんにちは、発行人の理学療法士 レナトです。

理学療法士はリハビリの国家資格です。

このメルマガの発行は「ほぼ週刊」なので、ゆっくりしたペースでやらせてもらっています。

拙い文章でお見苦しいところがあるかも知れませんが、よろしくお願い致します。






このメルマガは、自分が作ってきたYouTube動画が増えてきたため、

「こういう順番で動画を観てもらった方が分かりやすいですよ」というガイドとして始めました。

動画の内容の補足も、メルマガの文章中に書かせてもらっています






さて、第42号からは「福祉用具シリーズ」が始まり、

特に優先すべきものとして「移動」に関する用具を、且つ、症状のより重い方が利用する用具から、ということで、

「車イス」関連のお話から始めています。

本やネットで見つかるような一般的な情報でなく、リハビリ専門職としての経験からのお話をお伝えして行く予定です。





第45号は、こちらです↓


■「福祉用具:車椅子編」

  その4:車椅子の傾斜を変えて、座位保持能力を高める方法



■編集後記:床ずれ防止にも、後傾機能は使います



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■車椅子の傾斜を変えて、座位保持能力を高める方法
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前号では、どうせ一定の時間を車イスで過ごさねばならない状況なら、

「リハビリ(筋トレ)」の要素も入れた方が良いので、その方法や工夫をお伝えしました。

今回もリハビリの要素を入れるお話ですが、

対象の車イスは、ティルト式に関してです。

その中で、リクライニング式との違いに関してもお伝えしています






「【車イス】車椅子の傾斜を変えて、座位保持能力を高める方法」(2分21秒)

https://www.youtube.com/watch?v=GpZoZCg7nj0&list=PL87Hh0oDQOdeDg9_IQdK0yZ6GLeTNxHwT&index=3






動画の中では、

1.「後傾可能な車イスには、『リクライニング式』と『ティルト式』があるが、どう違うのか」

2.「安静が目的なら、どちらのタイプでも、ラクな方でいい」

3.「背もたれの後傾を軽減し(体を起こし始め)、体の支えを強めて行くことが目的であれば、ティルト式がベター」

4.「体の中心で力の拠り所になる腹部(腹筋)が引き延ばされて力を発揮しづらくなるのは、リクライニング式」

などについてお伝えしています。






ベッドで仰向けになっている安静姿勢と、イスに腰かけている安静姿勢には、上体の角度に「差」があります。

もし、この2択しかないと、「ベッドに寝ているほどではないけど、イスに座っているのはつらい」という状態の時、

ベッドだと必要以上に身体能力が低下しそうだけど、イスではつらくて姿勢を保てない。

「じゃあ、仕方ないからベッドで」という、勿体ないことになりやすいです。





そんな時に便利なのが、背もたれの角度を変えられるタイプの車イスです。

後傾角度を変えることで、仰向けに近い状態から、イス座位に近い状態まで調整できますので、

その時の体の状態に応じて微調整ができるのが利点です。






ただし、動画の中でもお伝えしていますが、リハビリの要素を入れるのであれば、

リクライニング式は不向きです。

理由は、腹部(腹筋)が引き延ばされて収縮できない(力を発揮できない)姿勢を余儀なくされるためです。

体の中心である腹部が締まらないと、全ての姿勢保持や動作が不安定になるという動画も

以前ご紹介しましたね(第35号のメルマガで)↓





「【家族もできるリハビリ】体の中心が「自動的に」安定し続ける簡単な方法」(1分47秒)


https://www.youtube.com/watch?v=ex6NVk20wCE&list=PL87Hh0oDQOdeDW4HobWyu55viPfhwKc92&index=4






ティルト式の場合は、背もたれと座面と両方が後傾するため、

腹筋が引き延ばされない姿勢を保ったまま、背もたれの角度を変えられます。

腹筋の収縮を促す姿勢を取れると→姿勢や動作の安定につながる(必要以上に低下させない)、という図式ですので、

リハビリの要素が入っているというわけです。






介護・介助をする立場の方は、実際に車イスに座る体験ができるといいですね。

デパートの介護用品のコーナーなどに、リクライニング式やティルト式、両方の機能を備えたタイプがある場合は、

背もたれの角度を変えてもらいながら、ご自分で体験されると、

「この角度だと、この辺に体重がかかるのね」とか

「リクライニング式だとお腹に力が入らないし、腰が反って痛いな」など

色々と気づきがあるかも知れないですね。







ここまでは車イスの「座り方」に関連するお話でした。

車イスは、座っている方も、介助する方も結構大変なので、

次回からは、車イスの「介助」に関する動画を、メルマガでご紹介して行く予定です。






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■編集後記
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車イスの後傾機能は、お尻付近の「褥瘡(床ずれ)」対策にも使えます。

ご存じの通り、床ずれは皮膚が負けてしまって穴が開き、

痛みや感染のリスクなどが発生する症状です。

皮膚が負ける要因は、同じ部位に(体重などの)圧力がかかり続けることですね。





一般的な人でも、眠っている間に「寝返り」を何度もうつように、

体は同じ部位に体重がかかり続けるのを嫌がり、「自動的に」防いでいます。

ところが、車イスに何時間も同じ姿勢で座らされていると、

ご自分で身動きが取れない方の場合は、床ずれができやすくなってしまいます。






車イスに後傾機能があると、

時々は後傾にしてあげることで、体重がかかる部位を、例えば、お尻から背中に移すことができ、

床ずれを防止しやすくなります。

床ずれは一度なってしまうと、対応が色々と大変ですし、

皮膚に空いた穴から病原菌が入ると高熱が出て入院になったりしかねませんので、

介護保険で車イスをレンタルする際も、要介護度によっては「ティルト機能」があるものを選んだ方が無難ですね。

レンタルの場合、無料の「お試し期間」がある場合が多いので、

ご本人もご家族も、色々と試してみるといいですよ。










最後までお読み下さり、ありがとうございました。

発行頻度は「ほぼ週刊」としていますが、

早まったり、遅くなったりするかも知れませんので、ご了承下さい


では、また次回をお楽しみに!

(レナト)



・今後もリハビリ関連の内容を、YouTubeの動画も使って、簡単にお伝えして行きます

(YouTubeのチャンネル名は「人生リハビリちゃんねる」です)。


・バックナンバー(ページの後半にございます):https://no-pain-yes-gain.com/free/w46