第44号:「福祉用具:車イス編」その3

 

 

 

 

<第44号(2020.2.15)>

 

 

 







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家族がリハビリをする時代 ~ご自分やご家族でカンタンにできて、効果の出るリハビリ~

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こんにちは、発行人の理学療法士 レナトです。

理学療法士はリハビリの国家資格です。

このメルマガの発行は「ほぼ週刊」なので、ゆっくりしたペースでやらせてもらっています。

拙い文章でお見苦しいところがあるかも知れませんが、よろしくお願い致します。






このメルマガは、自分が作ってきたYouTube動画が増えてきたため、

「こういう順番で動画を観てもらった方が分かりやすいですよ」というガイドとして始めました。

動画の内容の補足も、メルマガの文章中に書かせてもらっています






さて、第42号からは「福祉用具シリーズ」が始まり、

特に優先すべきものとして「移動」に関する用具を、且つ、症状のより重い方が利用する用具から、ということで、

「車イス」関連のお話から始めています。

本やネットで見つかるような一般的な情報でなく、リハビリ専門職としての経験からのお話をお伝えして行く予定です。





第44号は、こちらです↓


■「福祉用具:車椅子編」

  その3:座ったまま何もせず、筋肉を強くする方法



■編集後記:車イス体験で、感じたこと



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■座ったまま何もせず、筋肉を強くする方法
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前号までは、車イスから「ずり落ちてしまう人」の仕組みと対策に関するお話をしました。

車イスはもともと「移動用」として作られたので、ソファーのように「ずっと座っているもの」ではないのですが、

現状ではそういう使い方になってしまっている場合が多いため、色々と問題が生じますね。







しかし、「逆転の発想」で、

どうせ一定時間を車イスで過ごさねばならない状況ならば、

リハビリの要素が入っている方がいいだろうから、こういう方法がありますよ、という動画が

今回ご紹介するものです↓






「【車イス】座ったまま何もせず、筋肉を強くする方法」(2分53秒)

https://www.youtube.com/watch?v=3IY3q33fpYc&list=PL87Hh0oDQOdeDg9_IQdK0yZ6GLeTNxHwT&index=2






動画の中では、

1.「車イスに座ったまま、『筋トレ』になる方法がある」

2.「姿勢保持に大きく関わる体の中心(腹筋)と土台(お尻まわりの筋肉)を鍛えられる」

3.「筋肉は体重がかかると、体(関節)を支える仕事が発動しやすい」

4.「狙った筋肉の上に体重が落ちやすい姿勢をセットしてあげれば、『(マイルドな)筋トレ』になる」

などについてお伝えしています。






ご存じの通り、筋肉は使っていないと(仕事を与えていないと)機能が低下してしまいます。

なので、筋肉に「仕事を与えてあげるだけ」なのですが、

決して、筋肉が激しく収縮して大きなパワーを生み出すような強い負荷を与えるのではなく、

体重を支える程度の「持続可能な、マイルドな負荷」を与えます(これでも立派な『筋トレ』です)。






関節周囲の筋肉たちというのは、体重がかかると、

「あ、体重がかかった。体(関節)を支える仕事をしないと」という感じで、

「やる気スイッチ」が自動的に入ります(完全な弛緩性麻痺の状態以外では)。

その性質を利用するので、狙った筋肉にできるだけ「垂直に」重さをかえてやれば、効率的に体重がかかりますね。






具体的には、動画の中でお伝えしているように、

姿勢保持や動作のかなめ(力の拠り所)である、体の中心部(お腹、腹筋)に、

そこより上部の体ができるだけ垂直に載るようにセットしてあげると、重さが効率的にかかるので、

腹筋が仕事をせざるを得なくなります。





また、体の土台である「お尻まわりの筋肉」も同様で、

そこより上部の体(の重さ)ができるだけ垂直にお尻まわりの筋肉に降りるように

車イスでの姿勢をセットしてあげるだけです。

これなら、車イスに座ったままで、姿勢保持に必要な筋肉を使わざるを得ない状態になり、『筋トレ』している状態になります。






高齢者施設などでも、仙骨座りのような、お腹にもお尻にも体重がうまく載っていない座り方を見かけますが、

これだとメリットがほとんどないですね。

どこも鍛えられないし、ゆがんだ姿勢が固定化したり、

褥瘡(床ずれ)まで出来て、更に身体能力が低下しかねません。






そういう方々にも、『筋トレ』になる姿勢のセットをしてあげたいですね。

単に座っているだけで、身体能力が低下方向へ進むばかりでは困ります。

座っているだけで向上できる方が、ご本人や関係者全員にとって良いはずですもんね。

ただし、ご本人の体調が良い時に行ったり、様子をみながら休憩を入れてあげた方がいいです。

施す側の人が、体験的に車イスに色んな姿勢で一定時間座ってみると、色々と実感できますよ。






ちなみに、座面と背面と両方が後方に倒れる「ティルト式」の車イスでも『筋トレ』効果は出せるので、

次回は、リクライニング式との違いなども含めた動画を、ご紹介する予定です。








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■編集後記
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リハビリの学生によっては、体験として車イスに乗って、街に出ることがあります。

私も学生時代にやってみました。お店に行ったり、ラッシュ時に駅を利用してみたり・・。





まず、道を移動する時には、歩道の狭さや対向者のスピードが怖かったです。

もともと、車イスだと目線が低いので、周囲から圧迫感を感じやすい上に、

車イスだと素早くよけることができないため、余計に恐怖を感じます。

自転車が飛ばして来たりすると、本当に怖い想いをしました。






お店に入ると、通路の狭さや商品が置かれている棚の高さが、どうにも不便でした。

普段、自分が立って、歩いて店内を見ている時とは、風景も気持ちも、かなり違いましたね。





そして、ラッシュ時に駅を使ってみた際は、

特にホーム上で色々と感じました。

車イスに乗った自分と周囲の人々との動きや占拠スペースが違い過ぎたからです。

ラッシュ時は多くの人が、押し合いへし合い急いで移動するのに対し、

私は車イスで一定のスペースを占拠しているにもかかわらず、移動速度も遅いので、

「周囲の人々が自分をどう見ているか」などと「自意識過剰」な状態に、どうしてもなってしまいました。






社会が「多数派に便利なように出来ている」のは、効率の面を考えても、ある程度仕方ないのでしょうが、

今後更に高齢者が増えて行くと、高齢者は決して「少数派」ではなくなりますので、

社会や人々の「認識」が変化して行く必要がありますね。










最後までお読み下さり、ありがとうございました。

発行頻度は「ほぼ週刊」としていますが、

早まったり、遅くなったりするかも知れませんので、ご了承下さい


では、また次回をお楽しみに!

(レナト)



・今後もリハビリ関連の内容を、YouTubeの動画も使って、簡単にお伝えして行きます

(YouTubeのチャンネル名は「人生リハビリちゃんねる」です)。


・バックナンバー(ページの後半にございます):https://no-pain-yes-gain.com/free/w46